(真性キャリア密度)
不純物を含まない半導体を、真性半導体と呼びます。 例えばシリコンを例に考えると、シリコンの純度が100%の結晶があったとします。 現実には、11N程度までが現在の製造技術の限界のようです。 100%シリコンであるためには、22Nの純度が必要になります。 これは、もう人間の技とは言えない領域でしょう。
真性半導体の中の半導体を構成する元素は、全て原子と原子が電子を共有し合い、”お行儀よく”結合しています。 全ての電子が原子と原子の結合に使われてしまっている状態では、電流を流すのに必要なキャリアが全く存在せず、抵抗が非常に大きくなり、絶縁体として振る舞います。
原子は静止しているわけではなく、その温度に比例した振動をしています。 熱のエネルギー(熱エネルギー)で原子振動(格子振動)を続けているのです。 温度が高いということは、原子が激しく振動している状態に対応します。 原子と原子を結びつける一定の力(結合エネルギー)を越えると、固体から液体へ、そして気体へと変化して行きます。 通常用いられている半導体は、固体の結晶ですから、固体が溶ける温度(融点)以下で用いられることが前提となります。 原子振動が停止する温度、即ちそれ以上下げることができない温度が、絶対零度です。 絶対零度以下は、普通、絶対下がりません。
先に述べたように絶対零度では、真性半導体の電子は全て共有結合をしっかりしておりキャリアとしては全く働きません。 しかし、絶対零度以上の温度では、それまで原子間の結合に寄与していた電子の一部が、ある確率でその結合が切れます。 この確率は、フェルミ分布関数と呼ばれる計算式で表されます。 電子がその結合を切って(ふりほどいて)、結晶の中を自由に動き回ることができるようになると、その電子は電荷を運ぶキャリアとして働けるようになります。 電子が誕生するわけです。 ここで注意が必要なのは、電子はずっと結晶の中にいて、ただ、原子と原子を結び付ける電子(価電子)として存在していたものが、熱エネルギーでキャリアとして振る舞える自由電子にその形が代わるだけだと言うことです。
熱エネルギーで自由電子が形成される時、本来電子がいた位置には、電子の抜け殻ができます。 前回までに述べたように、(電子の抜け殻)=(正孔)ですから、
Point!
真性半導体の中では、熱エネルギーによって電子と正孔が全く同じ数だけ形成される!
この真性半導体の中の電子と正孔は密度が全く等しく、真性キャリアと呼ばれています。
Point!
真性キャリア密度は、温度が高くなると増加する!